呼吸運動のバイオメカニクス〜神経・関節・筋肉系の動き〜

肺は胸壁内側を覆う壁側胸膜と肺を包む肺胸膜という2つの膜で覆われており、両膜の間は陰圧なので、胸郭や横隔膜を動かすことによって肺の拡張・収縮を行う運動のことを『呼吸運動』といいます。

呼吸運動によって空気を肺胞へと運ぶ「換気」、肺胞と毛細血管との間の「拡散」、ヘモグロビンと結合して酸素を体中に運んでゆく「血流」の3つの動きが重要になります。

 

『筋肉の動き』と『筋肉の動きによる肋骨の動き』で肺は、伸縮運動します。

『安静時の呼吸』と『大きい呼吸(深呼吸および努力呼吸)』とでは、関与する筋肉が異なります。

また、『胸式呼吸』と『腹式呼吸』でも関与する筋肉が異なります。

 

吸気時・呼気時にどのような関節運動が起き、どのように筋肉が作用するかを知ることで、クライアントのコンディショニングを向上させるだけではなく、弱化している部位の運動の仕方、拘縮している部位のリリースなどが正確に行うことができるようになります。

神経

不随意呼吸の、呼吸中枢は延髄と橋にあります。呼吸中枢が、体内の酸素や二酸化炭素の量をチェックし、呼吸をコントロールしています。

呼吸中枢内には、呼吸のリズムをつくるペースメーカー細胞があります(本間生夫、1980年代)。

 

随意呼吸の中枢は、四肢の筋肉を動かす中枢と同じ大脳皮質にあります。

呼吸で使われる筋肉は、筋肉につながる脳からの神経が損傷を受けない限り収縮することができます。首や背中の外傷によって脊髄が損傷され、脳と筋肉をつなぐ神経系統が切断されると、人工呼吸器が必要になります。

 

関節

胸郭全体の可動性は、胸椎が肋骨の間の肋椎関節と肋骨と胸骨の間の胸肋関節(Sternocostal joints)が影響します。

 

胸肋関節は、上位7対の肋軟骨と胸骨の肋骨切痕の間の関節です。

ただし、第1肋軟骨は胸骨に直接結合するので、胸肋軟骨結合といいます。関節腔は本来、関節内胸肋靱帯によって二分されますが、この状態は第2肋軟骨の関節にのみ存続します。それより下方の関節は、加齢に伴い関節腔が消失する傾向にあります。

 

肋軟骨が広い範囲を占めていて、胸郭の可動性を大きなものにしています。しかし、肋骨軟骨は加齢とともに柔軟性を失ってくるため、徐々に可動性が低下してきてしまいます。

そのため、常日頃の胸郭運動が重要で、胸肋関節のムーブメントがイメージできているとエクササイズの質は向上します。

  • ポンプハンドルモ―ション

外肋間筋と内肋間筋の交互の収縮によって呼吸が行われます。

肋骨は背部で胸椎と関節で付着し、斜め前下方に向かいます。外肋間筋が収縮すると肋骨は胸椎との関節を支点として、全体が前上方に持ち挙げられて、胸郭の前後径が大きく拡がります。

 

  • バケットハンドルモ―ション

腱中心が下がり、横隔膜の下の内臓を押し下げ、下位肋骨を外側に持ち上げることにより、胸郭の体積は大きくなります。

この動きがバケツの柄を持ち上げる動きに似ていることから「バケット・ハンドル・モーション」と呼称されます。

筋肉系

肺そのものには肺を動かす筋肉がなく、呼吸運動は胸部・頸部・腹部にある『呼吸筋』の働きによります。
呼吸筋とは呼吸をするときに胸郭の拡大、収縮を行う筋という以外に明らかな定義がないので、どこまでを呼吸筋というかは文献などにより異なります。
息を吸うための筋肉を「吸息筋」、息を吐くための筋肉を「呼息筋」と呼びます。

吸息筋が収縮の際、胸郭の拡張に伴い肺が膨らみ、呼息筋が収縮すると胸郭は縮み、それにつれて肺は縮みます。
肋間筋は肋骨を動きやすくし、呼吸を助けます。

呼吸筋は、主に安静呼吸時に働く呼吸筋と努力呼吸時に補助する呼吸補助筋があります。
呼吸筋に含まれていない筋の中でも、呼吸に関連する筋は多数存在しています。

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